早いもので、東日本大震災発生から10年が経ちます。しかし、その後も熊本地震や西日本集中豪雨、令和元年東日本台風など、大規模な自然災害が相次いで発生しています。加えて、昨年からは新型コロナウィルスによる感染症が発生・蔓延し、人々は、いつ収束するか予想できない不安な毎日を送っています。改めて自然災害や疫病で亡くなられた方々のご冥福をお祈り致します。
日本人は過去に、こうした幾多の自然災害や戦乱、疫病の蔓延などによる艱難辛苦を経験しながらも、その都度、力強く乗り越えて今日の経済的豊かさと平和な日本をつくりあげてきました。
しかし、現状に目を向けた時、幸福な人生や心の安らぎは、物質的・経済的な豊かさに比例するものではないということ、また、平穏な生活はいつまでも続くものではないということに改めて気づかされます。利己主義的な身勝手な生き方を反省し、豊かな心、家族や地域の絆、人と人とのつながりの大切さに気づく良い機会なのかも知れません。
これからのお寺は、こうした時代的な使命、本来的な役割を自覚し、積極的に地域や社会に貢献するとともに、人々に心の安らぎを与える存在となり、僧侶がその先達にならなければならないと思います。それこそが仏教者に課せられた大きな使命の一つ『菩薩行』であり、わが宗門曹洞宗の開祖道元禅師が教示なされた『発願利正』(他のために生きる実践行)の教えにかなうものだと思います。浅学非才は言うに及ばず、微力ながら生有る限り精進致す所存です。 合掌